その恋、取扱い注意!
「湊、ありがとう」

気付けば自分から湊に抱きついていた。

「とは言え……」

まだ何かあるの?

「とは言え?」

オウムのように繰り返す。

「しばらく様子を見た方がいいと思う」

「うん。今のところ、電話もないし……ストーカー行為がなくなったのはヘアースプレーのおかげかと思ってた」

「ヘアースプレー?」

湊の形の良い眉が片方上げて、問いかける。

「うん」

あの時のことを話した。
ヘアースプレーで撃退したことも。

湊は怒りを抑えているようだった。
メガネの奥の瞳は、苛立ちが見えたから。

「……ヘアースプレーか、なるほど。お前の同僚に感謝しなくちゃな」

「うん。久我さんが持たせてくれなかったら……」

強い力だった。
私の力ではどうすることも出来ない強い男の力。


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