その恋、取扱い注意！
「っ――う、ま、待って！」


キスはしたい。キスはしたいけれど、下で誤解されるのは嫌。


私はふっと力を抜いて、湊の腕の中からするっと抜け出した。


「逃げるの上手いじゃん」


湊は気を悪くした様子もなく、楽しそうに笑う。


またからかわれたんだ。



「美海～？　湊～？　何してるの？」


ドアの向こうから弾むような姉の声が聞こえてきた。
慌ててドアを開けると、姉が訳知り顔で立っていた。


「湊、ご両親呼んで飲みませんかって」

「あ――ちょっと呼んでくるわ」


湊が両親を呼びに部屋を出て行った。
部屋に残された私は姉のニヤついた笑みに視線を逸らすと部屋を出た。


「湊とあんたがね～」

「な、なによ。おかしいって？」

「湊なら選り取り見取りでしょうに。ま、お母さんたちも大喜びだから良かったわ」


階段を下りながら姉の声が降ってくる。
下りたところで母が現れた。


「美加、早く手伝って。あ、美海は未来のご両親をお願いね」


せわしなく母は姉を連れてキッチンへ行ってしまった。


こんな時間にお酒の用意をさせてしまって申し訳ないな。

けれど、どこか弾むような母の背中を見て、少し安心した。


その晩、賑やかな時間は遅くまで続いた。

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