その恋、取扱い注意!
「そうですね……」

「一度ね、湊が席を立った時に、タバスコをパスタにかけたことがあるの。ほんの少しね。それなのにすごく辛がって。何度もお水のおかわりをしていたわ」

「そうですか……」

好きな人にそれをしちゃだめでしょ。

「そんないたずらにも湊は怒らないで笑ってくれたわ」

うー。私がそんなことしたら滅茶苦茶怒って、仕返しされること間違いなし。

「松下さんに優しいんですね」

「ええ。湊は優しかったわ」

なんで別れたんだろう。ふと思う。
道端であった時、松下さんはまだ湊が好きなように思えた。

「……私がバカだったのよね。湊はモテるから、付き合う前や付き合っている時でさえ女の子から誘われていたわ。ある時、湊が他の女の子とデートしているって聞いて、衝動的に別れを切り出したの」

「湊が浮気を?」

少しチャラいところもあるけれど、付き合っている時は別の女の子とデートしないと思う。

松下さんはゆったりと首を振る。

「浮気じゃなかったわ。湊の友人の彼女で、彼氏のバースデープレゼントを一緒に選んでいただけだったの。でもその時は信じられなくて……」

そこへウエイトレスがコーヒーを運んできた。
私はいつものようにブラックで。
松下さんは湊と同じように、ミルクとお砂糖を入れている。

「安西さん。私、湊ともう一度付き合いたいの」

え……。

カルボナーラを口に運ぼうとした手が止まった。
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