あふれるほどの愛を君に

「ハル、どうしたの?」


ぴくっと体を震わせた彼女が言った。


ハル ── 阿久津 陽(アクツ ハル)

これが僕の名前。
年は、再来月の五月で22になる。


「帰したくない……」


首筋に顔を埋めて告げると、彼女は小さく息をついた。


「もうっ、またそういうこと言うー。だって明日は仕事だよ?」


そうだけど……。

一般的なサラリーマンの僕は、日曜の今日は休日で、明日からはまた仕事。

会社に行くのが本当に嫌なわけじゃないし、むしろ仕事は好きだけど。

でも大人の僕にだって、たまには駄々をこねたくなる時だってあるよ。一日中好きな人と一緒にいた、こんな日は余計にね。

だから、この気持ちをそのままぶつけた。


「もっとサクラさんと一緒にいたい」


さらに腕をまわして、封じ込めるように細い体を包みこんだ。

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