my existence sense-神が人を愛す時-
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...........。
街の喧騒も人の気配も感じない。
この世界の中で此処だけ現実から切り離されたようにさえ感じる異空間があった。


耳を澄ます。
聞こえるのは自由に空を舞い踊る小鳥の囀りとサラサラと風が揺らす木々の声。

聞こえるのはそれだけ。
辺りを取り囲む木々の緑のその間からは穏やかに陽の光が差し込み、僅かに湿り気のある地面をほんのり明るく映し出す。




此処は世界の外れ。


周りは一面の海。
断崖絶壁に囲まれて他の侵入を許さない孤高の地。
周りの海は潮の流れが複雑で激しく船では辿り着けず、もし万が一辿り着けたとしても取り囲む断崖絶壁が侵入を拒む小さな島。

唯一その地へと踏み入れる道は空だが、残念ながら人は女神から翼を与えられなかった生き物であるために踏み入れることは叶わない。

此処は人にとってはもはや伝説上の島。
人は女神の住まう地だと云い、此処を"聖域"と呼んでいた。









...........。


永きの間、誰も足を踏み入れていない地。

ッ。
そんな地の緑に囲まれた深々とした森の真ん中。
この地にはそぐわないただ一つ人の手の入った建造物が静かに聳え立っている。


天に聳える塔。女神の塔。
いつ建てられたかは定かではない。
だがそれは幾千年もの間風化することなく美しい姿を保ちただ静かに佇んでいた。









ッ。




「............時が、来た」



取り巻く静寂。
小鳥の囀りと緑の騒めきしか聞こえないはずの静寂の中、その静寂に溶け込むように声が聞こえた。

それは幾千年ぶりのことだった。
或いはもっと永きの間無かったことだった。


静寂なこと地に―――そしてこの世界に女神の声が零れ落ちた。






ブワアァァッ。

声の幾何後、一筋の風が吹き抜ける。
目も眩むような凄まじい風だった。



ほんの一瞬だけ吹き抜けた風に奪われた意識。
..........。
ハッとした時にはもう、女神の声も気配も無い。

世界の誰もまだ知らないところで、今何かが動き出した。
それを知っているのはただ一人、女神その人だけだった。








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