ひとつ、屋根の下で

力を抜いて預けた身体を、ぎゅっと力強く抱きしめてくれる腕が、どうしようもなく好きだと思った。


ポロポロと絶え間なく頬を伝い、凌の服を濡らしていく涙に怒ることもせず、ただ黙ってポンポンと背中をあやすように撫でてくれる手の温かさに私の胸も温かくなるのを感じる。


このままずっと凌の腕の中にいられるなら、今感じている苦しさ全部、逃げずに受け止められるかもしれないって、思った。



今までは、一方的に抱きしめられるだけだったけど。


勇気を出して、凌の背中に手を回して、キュッと抱きしめ返してみる。


すると、それに応えるように凌が私を抱きしめる力が強まって、まるでそれが、もっとしがみついてもいいって言われているように感じて。


そんな温かさに、優しさに、これ以上ないくらいの安心感に、私は余計に涙が止まらなくなった。



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