穢れた愛
第十二章 朧月夜の湖畔
第十二章 朧月夜の湖畔





午前0時過ぎ


怯えきった声で
意味不明な言葉を
繰り返す絵里


タクシーの中で
携帯を受けた横瀬は
窓の外の朧月を眺め


疲れ果てた
溜息を漏らす


「落ち着けよ 絵里」


崩れ落ちる泣き声
二晩 帰らぬ
青柳を知らせる電話


青柳の為に
感情を取り乱す
絵里の訴えを聞くのは
二度目


栞が亡くなった日


今宵と同じ
朧月の薄暗い夜


湖の中
放心状態で
水に浸かる青柳を


”助けて”


震える躰から
声にならない
悲鳴染みた言葉を
絞り出し


横瀬に縋りついた
記憶が蘇る


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