穢れた愛
テーブルの足元に
雑誌と一緒に購入した
参考書
忘れ掛けていた存在も
一瞬でも眼に映れば
脳裏の片隅を支配する
膝に乗せた雑誌さえ
眺めているだけに過ぎず
手を伸ばし引き寄せた
折り目のない参考書
パラパラ頁を捲ると
堅紙の表紙が
記憶形成を保ちたがり
夕夏の指先を弾き
購入した当初の
参考書に戻った
「本のクセに 生意気」
参考書に喧嘩を売られた夕夏は
勝負を挑むように
参考書を拾い上げると
鳴響く携帯電話が
テーブルの上で
小刻みに唸り出した