穢れた愛
胃の中のモノを
すべて吐き出し
座り込む青柳
白い服も気にせず
青柳の横に
座る夕夏
路地から眺める
通りを行き交う
人々の波
刻々と訪れる
夕刻の生温い風
青柳の溜息が
封を切るように
言葉が漏れる
「横瀬は 戻って来ない
帰れば」
夕夏は青柳の顔を
見ようともせず
ぼんやりと空を眺め
「鞄 車の中なの」
深い溜息を吐き出し
青柳は横瀬に電話を掛けた
数秒鳴り続ける
呼び出し音に
耳を傾け
愚痴も零さずに
ただ一言
「女の鞄」
用件だけを告げ
返答は短く
『後で取りに来い』
会話は終わった