穢れた愛


下降する
硝子張りのエレベーター


ロビーの片隅に
山越を見上げる青柳が
携帯電話を耳にあて


接近する山越へ
会釈をする


呼びつけた謝罪もなく
静止する青柳の視線は
山越の表情に臆する事なく
冷酷な眼差しを遣し


「山越夕夏は
 常務の娘ですか」


不意に告げられた言葉に
息を呑む山越は
飛び跳ねる心臓が高鳴り


一瞬にして
常務から父親へと
摩り替ってゆく


冷静に確信を得た青柳


「絵里
 夕夏に代われ」


耳にあてたままの携帯へ
指令を与えた


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