穢れた愛


玄関先でブーツを履き
着たまま寝た
ワンピースの皺を叩く夕夏


「お世話になりました」


振り返り頭を下げる夕夏を
腕を組み見下ろす絵里が
身動きひとつせず


「アンタみたいな娘
 気に入らないわ」


夕夏の腕に巻かれた
ブランド時計に視線を落とし


「何ひとつ苦労もなく
 愛される女って
 ムカツク」


絵里の強い言葉に
一瞬 戸惑ったものの
作り慣れた笑顔を浮かべ
敵意を示さない夕夏


「ごめんなさい
 ご迷惑おかけしました」


”栞”の雰囲気に
似ている夕夏


気苦労もなく
青柳を突き動かす
世間知らずの箱入り娘


誰からも守られ
愛される資格を
簡単に手にする


絵里は爪を噛み


「帰って」


玄関から夕夏を
追い払っていた


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