穢れた愛
第九章 沈殿する泥
第九章 沈殿する泥




紫色の携帯電話


飯櫃な天然石が並ぶ
ストラップ


電話を切った夕夏が
絵里の携帯電話を
テーブルへ置き


「何だって?」


絵里は天然石を
指先で弄りながら
夕夏に問い掛けた


「父が 今から会社に
 鞄を取りに来なさいって」


「そう」


天然石を爪で弾き
煙草に火を灯す絵里


優しく迎え入れた
微笑みは消え
冷淡過ぎる程の視線を
夕夏へ向ける


「お金は あるの?」


夕夏は必死に
笑顔を繕い


「タクシーで行きます」


青柳の電話が
掛かってきた時から
不機嫌になり始めた絵里に


対処出来ない夕夏は
引き攣る愛想笑いを絶やさず
気遣っていただけに


早々と御礼を告げ
立ち去りたい思いに
神経を奪われていた


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