穢れた愛
第十章 消音する貝
第十章 消音する貝




脳波を刺激する
単調な電子音
携帯アラーム


幾度となく
繰り返す
スヌーズ機能


枕に顔を埋め
寝返りを打つ横瀬は
アラーム音が消され
変わる着信音に
携帯電話へ手を伸ばす


表示される
”絵里”の文字


煙草に削られた
音にならない
掠れ声で応答する横瀬


細々とした
篭る声が
受話器から漏れる


『青柳が
 帰ってこない』


沈むベッドへ
身を預け
緩む頬肉


「絵里らしくない」


横瀬は目を閉じたまま
夢と現実の境を
漂っていた


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