穢れた愛


寝汗を掻いた
シャツを脱ぎ
首を摩る横瀬


酸素不足の脳が
欠伸の指令を与え


起き上がった横瀬は
夜中に飲み残した
温い珈琲を飲み


最後の煙草に
火を灯す


「会社じゃねぇの?」


返答のない沈黙
重苦しい溜息
絵里の悲痛が
滲み出る


『ゴミ箱の中に
 社員証が棄ててあるの』


生き欲のない青柳
横瀬に右と言われれば
右を向く愚か者


横瀬の薦めで
入社した職場


同社に勤めていた青柳を
上手い口車に乗せ
体裁よく追払う為に


採用試験を受けさせ
ヘッドハンティングへ
持ち込ませた
巧妙な遣り口


学生時代から
金魚の糞のように
横瀬にへばり付く
青柳の存在


鬱陶しいと
思い始めたのは
青柳の業績が
高い評価を受け


海外にある本社へ
赴任が決まり
意図も容易く
断った時だった


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