穢れた愛


見えない糸を
手繰り寄せる


拾い上げた
携帯電話


”0”


短縮番号


軋むベッドに座る横瀬


静まらぬ心音と
重なり合う
長いコール音


無言の
通話


時間だけが
カウントする


『横瀬さん』


受話器から届く
聴き慣れない女の声


顔を上げた横瀬は
衝撃的な苦痛に
不屈の眉を寄せ


「お前 誰?」


テラスに佇んでいた鴉が
羽音を鳴らし
大空へ飛び立ち


『夕夏』


湖に浮かぶ
”栞”の瞼が
静かに開いた




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