穢れた愛
駅で夕夏を
車に乗せた時から
停止した歯車が
錆びた音を奏で
動き出す
”栞”の面影に
幻影が被さる
夕夏の存在
湖畔に佇む
氷結した
青柳の姿
誰ひとり
声を掛けられず
顔を叛けた記憶
闇の中へ
封印した
出来事
真夏の太陽に
解凍される
氷の湖
”栞”の白い腕が
氷上を突き破り
しなやかに
青柳を呼ぶ
唾を飲み込む横瀬は
幻想的な想像に
首を振り
「青柳に 代われ」
躊躇う夕夏の声が
”栞”の声に
摩り替わる
『一緒に居ないよ』
残された
青柳の携帯電話
繋ぎ止める
透明の釣糸が
プツンと切れた