4文字のあいしてる【完】
私に振り返ることなくそう言って圭吾はまた一歩ずつ足を進めて行く。またその姿を小走りで追いかけるけれど隣には並べなかった。


会いたいけど本当に会えるかどうかもわからない。こんな無謀な計画を快く協力してくれたのに諦めようとしている私を見損なったんじゃないかと思ったから。



ふと、前を歩く圭吾が思いついたかのように立ち止まった。振り向いて私と向かい合わせになる。





「奏、ばあさんの薬の袋に書かれてた病院名分かる?」




「病院?」




「そう。通院してた病院なら絶対にばあさんのことわかるはずだ」




一生懸命頭の中であの光景を思い出す。病院、病院。




「藤なんとか病院って書いてたと思う」




わずかな記憶だけどふと浮かんだ藤の文字。



でもその先が思い出せない。
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