サキヨミ。【BL】
そう願ったのが数日前。
結果として、俺は彼が事故に遭うのを止める事が出来なかった。
彼は車に撥ねられ、未だに目を覚まさない。
もうじき目を覚ますはずだと医者は言った。
けれど瞼が開く事も、唇を開け俺に向かって悪態を吐く事も、指先が伸びてくる気配も無い。
容態は安定しているからと、彼の両親は今席を外している。
二人っきりの病室で、俺は嫌な事ばかり考える。
あの未来はちゃんと生きているのだろうか。
このまま目を覚まさなかったら、と最悪な想像が頭を巡る。
もしかすると、やっぱり全ては俺の妄想で、勝手に頭の中で作り出した事なんじゃないか。
そう考えると俺から彼の手に触れる事すら躊躇ってしまう。
「俺があの時、あんな事を言わなければよかったかな」
好きだと、告白するだなんて言って、彼は驚いていただろう。
顔は見えなくとも、息を飲む音で想像はついた。
あの時に驚かせていなければ。
いや、電話をかけずにいれば。
彼の足はもっと早まったに違いない。
それならば彼を撥ねた、信号無視の車と出くわす事は無かったかもしれない。
「けど、」
例えあの時に気づいていたとしても、何もせずにいる事はできなかっただろう。
「好きだ。……好きだからっ、」
ああ、違う。
本当はあの時でも、こういう時でも無い。
こんな形で言うつもりは無かったんだ。