恋の華が舞う季節

悲涙

「落ち着いた?」

そう言って手渡された、青いチャック柄のハンカチ。

私はおずおずとそのハンカチを受け取り、目を拭う。

「……いきなり、ごめん……」

「気にしなくてもいいよ。
 それよりも、君の方が気になるよ」

「――あ……」

「涙の理由は、聞かない方がいい?」



優しい口調。

本当に雰囲気までもが、葵に似てる……。

だからなのかも知れない。


こんな、見ず知らずの人に頼ってしまったのは。


「俺の名前は、斉藤樹(サイトウイツキ)。
 君は?」


「早瀬(ハヤセ)結衣……」


「また、話させてもらっていいかな?」


「あ、ハンカチ洗って返すから、その時に!」

「了解!
 俺のクラスは、3年2組だから」



――3年2組……


私達3年生のクラスだけ特別で1組が個別に離れていて、あと2組と3組は隣。


だから秦の居るクラスまでも通らないといけない。

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