恋の華が舞う季節
私はそれが恐くて、俯いた。

その様子を察したかのように

「俺が、教室まで行く」

そう、言った。


「……いいの?」

「うん。早瀬さんが、よければ」

「私は、もちろんいいよ?

 ……てか、私の事“さん”つけなくれもいいから」


「じゃあ、呼び捨てで。
 俺の事も、呼び捨てにしていいから」


「うん」



そして樹は、私に笑顔を見せて、行ってしまった。


私は後姿が見えなくなるまで、思わず見入ってしまった。




――樹……


あんな人が、身近にいたんだ……


私は今まで、自分以外のクラスの人と接したことがなかったから、気付いていなかった。

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