恋の華が舞う季節

躍進

「これが事実なの。もう、諦めて?」


秦を好きになるという事は、葵を裏切る事になる。


私は葵との思い出を、秦との思い出に塗り替えようとしてる。


最低で、最悪。


こんな私、葵が見たらショックを受ける。



「結衣……」


私の手を引き寄せて、抱きしめる。


「――そんな過去、振り払えよ! 俺は、絶対離れねぇ!!
 結衣の過去を知ったし、もう、全て俺に……」


私は秦の手を、無理矢理払った。




「私は……もう、恋したくない。傷つきたくない。嫌なの。本気になって、後悔してしまうのが」


「違うだろ!」


秦は真剣に私を見つめる。


「お前は、葵とか言う奴の過去にしがみついて、動こうとしないだけだろ?!
 逃げるな!! ちゃんと、俺を――見てくれ……」



初めて見た、秦の涙。




――私の為に、泣いてくれてるの?
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