孤独と孤立と絶縁と
零
生い茂る手入れのされない新緑の中、高く高く聳え立つ飾り気の無い古びた建物が1つ。
灰色の壁には蔦が複雑に絡みつき、長年使われていない事を物語る。
不思議と入口の見当たらないそれは、最上部1つだけ小さな窓が存在する。
鉄格子の施された其処から伸びる、白くてか細い女性の腕。
その手の中、静かに舞い降りる淡い桜色の綺麗な花弁。
しかしそれはその手に触れた瞬間色褪せ美しさを失う。
「…どうして……どうして、私は……」
枯れた花弁は粉々となり、吹いた風に飛ばされる。
空になった掌は花弁を掴む事は無く、変わりに春の風を握り締めた。
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