あの日、あの夜、プールサイドで


それから、五年後。
とある喫茶店で俺はジュンと密会をしていた。

「コウちゃん、コレ、頼まれてた写真と報告書。」

ジュンが差し出した茶封筒を見て、俺はニンマリとほくそ笑む。


「サンキュー、ジュン。
で…どうだった??」


「ハッキリとした証拠は出なかったけど、二人の間に何かがあったのは間違いないね。毎日のように遊んでたのに、ある日を境にパッタリと会わなくなってる。最近になるまでは、会うことはおろか、電話も会話も接点は何もなかったらしいよ?」


コーヒーをすすりながら、淡々と結果報告をするジュンを見ながら、俺はこう思った。



“ついに藤堂のアキレス腱を手に入れた。”



ジュンは愛児園を卒業した後、探偵事務所に就職をし、今では立派な探偵として働いている。


ジュンがくれた茶封筒の中に入っているのは“おねーさん”こと桐谷美織の写真と藤堂響弥と二人の関係の報告書。



ふん……
これで、次の日本選手権はいただきだな。



俺は心の中でほくそ笑む。


バカな藤堂。
ほーらね?
愛なんて足かせにしかならないんだよ。


オマエがおねーさんに真剣に恋なんてするから、俺みたいな悪いヤツに利用されて、栄光の人生から大転落。


オマエの手に入れた賞賛と栄誉。
オリンピックの切符にMETSERAへの就職。


全部全部俺が美味しく頂いてやるから、ありがたく思ってくれよ??


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