家庭*恋*師
「いや、待て待て待て!おかしいだろそれは!」
「なに、あんただって中学受験の時みてやったでしょ、AreとIsの違いのわからない一樹くん」
「要らねー情報流すな!つか、お前自分の言ってることわかってんのか!」

幼馴染だからこそ知っている、お互いの恥ずかしい過去を暴露されながらも、カズはこのあまりに脳天気な集まりに終わりを告げるべく、続ける。

「男とおんなじ部屋なんて無理に決まってんだろ!」
「えー、でも、女連れ込んだりするような奴なら、同室は女のが問題なくない?女同士ならではの対処法だってあるしさ」
「お、それは考えてもみなかった」
「でしょー?」
「問題あるだろ!」

すっかり南の言葉にいいくるめられている豪を見て、南は勝利を確信した。残るは、この小姑のようなカズだけだ。

だが、彼は彼女に最高のエサを与えてしまったのだ。

「問題って、なにが?」
「男と女が密室でなんて…!」

南の、まるで楽しんでいるような口ぶりに気づくべきだった。

だが違和感を覚えた時にはすでに遅く、南は大きく口角を上げる。

にま、という効果音が似合いそうな、ぬめっとした笑い。

それを見たカズは、背筋が凍るような思いだった。
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