家庭*恋*師
ビシッ、と効果音がつきそうな勢いで南を指す。そう、この話し合いの発端は、新品の制服に身を包んだ彼女の出で立ちだった。

動く度にヒラ、と風に舞うプリーツスカートから伸びる脚はスカートのチェック柄に合った紺のロングタイツに包まれ、革のローファーとのスタイルは気品あふれるもの。ベージュのセーターから覗く白シャツのカラーの下には、鮮やかな緑のネクタイ。

どこからみても、普通の…いや、普通よりもオシャレで恥ずかしくない制服だ。しかし、カズの文句はそこにあるわけではない。

「なんでうちの制服着てんだよ!」
「いや、それは…」
「見りゃーわかるでしょ」

言葉を濁らせようとする豪を押しのけ、自分よりも頭一つ分以上背の高いカズを睨み上げる南。

「佐久良南、本日より2年A組に転入することになりました。よろしく」

だがその表情は、ただ厳しいだけではなく、どこか不敵の笑みをも思わせるように口角を上げた。
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