家庭*恋*師
鍵を閉めた後に零した、言い訳じみた言葉と似ている。皓太朗はそんな風に感じていた。でも、それを考える余裕さえない自分に気付く。

例えば、真っ赤になった小さな耳だったり。自分の肩に置かれた熱い手だったり。震える長い睫毛だったり。

佐久良南というこの少女のすべてに、自分の意識が持っていかれそうになっている。

覚悟を決めたように下唇をまた噛んだ彼女。桜色のそこに血が集まり色味を増して、まるで自分を誘っているようだ。親指を唇にかけて、噛むのをやめさせる。

…彼女から、など言わなければよかった。今にも噛み付きそうになっている自分を抑えながら後悔した。

だが、そうも長く待たなくても良さそうだ。唇に触れたのを、諭されたのだと勘違いした南は、聞いてとれるほど大きく息を吸った。きっと彼女のことだろう、息を止めるために肺に空気を溜めるつもりに違いない。そう考えると、自然と笑みが顔を緩め、口角をあげさせる。

「…目。」
「あぁ、はいはい」

いかにも迷惑そうな声で言われれば、聞いてやるしかない。皓太朗は目をとじ、顎をくい、とあげた。

啄むようなキスをして離れたところをからかってやろう。それだけ?と強請れば彼女はどんな顔をするだろうか。もう既に、意識はキスの後の所に移っていた。

だからこそ、次の瞬間、何が起こったのか理解するのに時間がかかった。

くちゅ、

いかにも艶かしい音を立て、唇を割られる。南の舌が、皓太朗の舌に絡み付いてきた。
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