ツラの皮
「ふーん。人間変われば変わるもんだねぇ。」
感心した風な呟きに俺は回想を止め、麻生を見下ろした。
麻生はニコリと人を食った微笑を返す。
「まあさぁ、どっちかってと一方的に貢がれる方であんまりプレゼントとかしないんだろうけど。それにしてもさ、高遠って付き合いの金払いはいいくせに、貴金属の類のプレゼントは合えて意識して避けてただろ。特に指輪はさぁ。」
本当に抜け目ない奴だ。
コッチはノリで贈ったものを、後生大事に持ち続けられるとなると肌寒い。
しかも『高遠から貰った物』と付加価値を付けられたりするとゾッとする。
そういう意味では貴金属は貴金属として、飽きると同時に質屋にでも打っ払う悪女の方がいっそ好ましい。
アクセサリーの中でも特に指輪は結婚指輪の先入観が強い所為か、人を縛り付ける効果が高い。
それを知ってから、例え露天商の安物といえども指輪だけは絶対贈らなかった。
そんなわけで俺の指輪は結構希少価値なんだって。
アイツは絶対分かってない。