ツラの皮


鈴は暫くむぅっと口を尖らせていたが、やがて諦めたようにトールに向かって歩き出した。


そのタイミングで俺と目が合って―――


驚いたように見開かれた目が次の瞬間慌てて逸らされた。




何なんだ、その可愛くない反応はっ!



むっとするのと同時に心中をどす黒い雲が垂れ込める。


腹が立った、だけじゃない。


針で突くみたいなチクチクと嫌な痛みが胸だか、胃の辺りで発生した。




顔を顰めたまま振り返ると、麻生のニヤニヤした笑顔とぶち当たった。



「これしきのことで妬かない妬かない。余裕がない男は嫌われるよ?なにはともあれ雑用叩き出しといて正解~♪って素直に喜んでおきなって。その方が俺も嬉しいし?」


「オマエな……俺が悪者みたいに言うな。それになんでオマエが喜ぶんだ……」


言いながら俺は目を眇めた。




「そういえばオマエ、なんか反応薄いよな。ひょっとしてアイツが来るの知ってたのか?」




「ピンポーン。っていうか、成り行きなんだけど俺がタチバナさんに現状報告したんだよ。アレコレあって高遠がイラついて怖いですぅってな。」






てめ、何を勝手に!!!



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