ツラの皮
小さく含み笑った時、背後で叫び声とガタガタと耳障りな音が上がった。
みんなの視線を浴びて倉科登留が小道具の詰まったダンボール塗れで転がって体裁悪そうに笑った。
「あたた……スミマセン。そそっかしくて。余所見してたら躓いちゃった。」
この度の役者だが本業はアイドルで、美少女といってもまだ通用しそうな可愛い面差しの中坊。
だが、中身は斜に構えた餓鬼そのもの。
俺や麻生に男としてのライバル意識を燃やしているらしく、神経を逆撫でするような言動が鼻につくが、頭がいいので公然と食って掛かることはなく、小賢しいの一言に尽きる。
立ち上がろうとしたトールは「あいて」と足を押さえて蹲った。
どうやら捻ったようだ。
ドジめ。
タチバナがドンッと鈴の背中を押した。
「ホレ、輝かしい初めてのお仕事だ。旅館まで付き添うなり怪我の手当てなり面倒を見てやれ。」
「はぁあ!?何で私がっ……。それに私、荷物。」
「荷物は俺が運んどいてやる。俺はもう少し監督と打ち合わせしてから行くからよ。」
ホントにはぁ!?だ。
なんで鈴だよ。
今更だが、俺はコイツのことに関しては随分と心が狭い。