ツラの皮
タクシーのドアが閉まる前に―――
「鈴。」
腕を掴んで引き寄せて、唇を奪った。
「ば、バカ…っ!」
赤い顔で運転手を伺って俺に悪態を吐く鈴。
うるっせー。
こんなん今の俺の欲求不満にゃ何の足しにもならねぇっつーの!
……と内心で吐き返した悪態をニッコリ笑顔で覆い隠し
「今日はしっかり休め、な。」
これ以上ない程、優しく囁いた。
百パーセントの本心であり百パーセントの演技。
本音を言えば力ずくでも引き留めてぇトコロで、
でも体調崩すなよって気持ちも本当で。
……イイ男だと思われたいってのも、嘘じゃない。