ツラの皮
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タクシーを使おうとしたのは後ろに居るのかいないのか分からないストーカー?を巻くためで、雪乃の家はそんなに遠くナイ距離にあった。
歩いて十五分。
辿り着いたのはセキュリティーも万全な、界隈でも結構な高級マンション。
「じゃあ」と言って歩き出そうとした俺を「待って」という声が引き留める。
背中にしがみ付いてきた身体は、触ったら崩れてしまいそうな程脆く華奢で。
「放してくんねーか、雪乃。」
「私、高遠が好きなの。」
「俺は放せって言ってんだけど。」
「ねぇ、私達もう一度やり直せない?」
俺達の会話は噛みあうことなく、溜息だけが洩れる。
言ったトコロで聞きれてもらえないようなので、腹に回された腕を掴んで力づくで引き剥がした。
振り返れば、希うような切なげな表情で俺を見上げる雪乃がいて。
「勘弁してくれ。」
俺の口からは疲れたみたいなセリフしか出てこなかった。