ツラの皮
「えと……私と結婚したくないわけじゃないんだ…?」
「誰がそんなコト言った。」
「そ、そうですね……」
「ああ、そうだよ。」
「………。」
俄然大人しくなってしまった鈴を覗きこむ。
「てかオマエこそ俺と結婚する気ねーのかよ。」
困るってなんだ、困るって。
聞き捨てなんねーな。
「えぇっ!?や、結婚なんて考えた事もなくて驚いて…」
そう言ってぼふっと自ら顔を俺に押し付けた鈴が胸元で「ウレシイです…」と付け加えた。
消え入りそうな声だったけど、ちゃんと聞いた。
…この際俺的には同棲でも構わねぇんだけど…。
腕ン中でいつになくシオラシイ鈴にソワソワして思う俺の本音と言ったらそれで。
結局それじゃ部長に対抗しきれねぇんだけど、
本来の俺達のペースならば同棲云々ってのも早い辺りで、結婚なんてまだ先の話なんだよな、実際には。