ツラの皮
その時、穂積クンの携帯が鳴って、電話に出た穂積クンが麻生さんを呼んだ。
「脱走がバレた。次の仕事の打ち合わせするから戻って来いとよ。あ~、適当に言っとくからシミズは来んでいい。つか来ンな。オマエ仕事になるとウルサイし、纏まる話も纏まんねぇ。」
了承するように高遠はそっけなく手を上げた。
愛想のよい麻生さんの挨拶に笑顔を振り撒き、二人を見送った後。
私は体の芯を抜かれたようにスツールに弛緩した。
何か、疲れた。
だって本来の私は落ち込みモードでとても笑ってられる心境じゃなかったから。
お酒を飲んで雰囲気に呑まれて笑っていたけれど、やっぱり無理をしていたのかも。
静かになった途端杞憂がジワジワと舞い戻ってきて、本格的に落ち込み始めた。