蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


幸い、課のあるフロアは3階で、そんなにつらい段数じゃない。

カツカツとローヒールの音を響かせながら階段を上って行く。
月曜日からこうして階段を使ってるけど、誰一人としてすれ違った事がない。

エレベーターが三台もあるから、好んで階段を使おうとする人なんてダイエット目的の人か健康診断で悪い評価をもらった人くらいかもしれない。

少なくとも、エレベーターのドアが開いた時に特定の人物と鉢合わせしたくないから、なんて理由で階段を使ってるのは私くらいだと思う。

そんな事を思った矢先、上から降りてくる足音が聞こえてきて少し驚く。
そして、顔を上げてまた驚いた。

課長に会いたくないから階段を使ったのに、なんでこんなところで会ってしまうんだろう。

下りてくる課長に思わず立ち止まると、課長も私がいる事に気づく。
課長の視線が向けられただけで、自然と身体がすくんだ。




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