蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「なんでも、ありません」
久しぶりの会話のせいで、口調が少しおかしくなる。
「でも、何かあったなら……」
「なんでもありませんから」
何かあったなら、なんて、そんな事課長本人に言われると思ってなかったから、つい口調が強くなってしまった。
課長だって、ここ数日間意識して私に冷たくしてきたのに、何かあったかを聞くなんておかしい。
私が落ち込んでいる理由を分かってもいいハズなのに。
そんな風に思ったらイライラしてきてしまって、でも、久しぶりに課長と話せた事が嬉しくもあって。
色んな感情が一気に湧き上がるせいで、たったこれだけの事で泣きそうになってしまった。
だけど、課長の前で泣き出すわけにはいかないから、我慢しようとぐっと俯いて……手に握ったままだったポイントカードを思い出した。
それをギュッと持ってから、まだ私の前に立ち止まったままでいる課長に差し出す。