たった一言の言葉を。
「はぁはぁ…あ、明日香!?」
「もぉ、菜月は勉強はできるのに本当に体力ないよね」
あたしは母が元学校の先生だったから勉強は出来た。
でも、元テニス部だった明日香に比べては体力がない。だって、あたしは文化部だったから。
小さい頃、身体が弱かったあたしは運動することさえ許されなかった。
幼稚園でみんなが走り回ってる中、1人教室の中で過ごしている事がとても多くて…。

中学生になってからは、ある程度許可を貰えたけどやっぱり発作が出てしまったことがあった。
あたしの病気は、肺炎だった。
高校生になる前には完治している。一度、医師から余命を告げられたことがあったけど、今は気にせずに生きている。
あたしが生きる希望となったのは、明日香だった。

生まれた時から、幼馴染のあたし達はずっと一緒。
元は、親同士が仲が良いから隣にいることが当たり前のよう。
病状が悪化して、入院した時も明日香は毎日のようにお見舞いに来てくれた。

そして今、あたしは運動が出来る身体になった。それは、大きな変化でもある。
明日香の隣に並んで校門をくぐる。

「菜月ごめん、今日一緒に帰れないんだ」
「新くんですか」
「うん。デートする約束してて…」
「分かった。あたしも今日はバイトあるし」

明日香は今、彼氏がいる。
確か隣のBクラスの市原 新。
明日香はモテるから大変なんだろうなぁ。
あ…明日香もBクラスだった、なんて思い出しながら昇降口まで歩いていく。

「じゃあ、またね」
「またねー!!」

クラスの前で明日香と別れて、自分のクラスに入る。クラス別は入試の時に決められているらしい。
Aクラスは、頭脳が得意な理数系が多い。
Bクラスは、主に運動系が得意な人が多い。

あたしはAクラス。
入学の時言われたのが、Aクラスは入試トップのあたしともう一人いる優秀なクラスらしい。
確かに運動出来ないあたしは頭脳しかない訳で。別に入試トップになりたかった訳でも無い。


……ーーただ、平和に学校生活を楽しみたかっただけなの。
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