たとえ愛なんてなかったとしても
「本気よ。
ねぇ、本当はミヒよりも私が好きでしょう?」



俺は......。
やめろ、もうやめてくれ......。

もう、キャシーが分からない。


近づいたと思えば、離れていって。
手に入れたと思えば、簡単にすり抜けていく。

俺の知っているキャシーなんて、ほんの一部分で絶対に全てを知ることができない。

どれだけ願っても、決して、手に入れることはできないんだ。



「なんなんだよ.......、何がしたいんだよ。
そんなに俺を苦しめて楽しいか?」


「......そうよ」



体を押し付けられて、
耳元にささやかれた言葉に、
キャシーの香りに、その唇に、その瞳に。

自分の意思とは反して体が熱くなるのを感じた。
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