たとえ愛なんてなかったとしても
ダメだ......、キャシーのただの気まぐれでしかないのに誘いにのったらダメだ。

それに何より俺にはミヒがいる。
辛い時に支えてくれて、今だって良くしてくれる、可愛い彼女がいるんだ。

裏切れるわけない。


一瞬いつ誰がくるのかも分からない廊下だということも忘れて、理性がとびそうになったけど。
なんとか自分を取り戻し、無言でキャシーの両手を掴んで、引きはがした。


何を言ったらいいのか分からず、その吸い込まれそうな目を見つめていると、
キャシーはクスッと笑って、俺の手を離して、背を向ける。



「そろそろ行きましょう?
あまり遅いと怒られるわ」



何事もなかったかのように、歩き出したキャシーの後を俺も追いかける。

なんなんだよ、本当に。
人の気も知らずに......。


どれだけ周りの人間を振り回せば気がすむんだ。きっとキャシーは一番本気になってはいけないタイプの女だろう。

今回の曲のコンセプトにぴったりの悪女だ。
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