たとえ愛なんてなかったとしても
なんとか仲直りというか、話しかけようとしても、話し合うどころか、こちらを見てもくれないので、もうどうしようもない。


反応のないエリックさんに話しかけるのは諦めることにして、反対隣にいた炎彬さんに話しかけることにした。

エリックさんは仕事に徹してくれると思うけど、炎彬さんは急にキレたりしないか心配だ。
プロだからさすがにないと思うけど......。



「明日、歌う曲ですか?
いきなり決まって大変ですね」



今日の収録の歌、ではなく、明日歌う中国で有名な曲を紙を見ながら練習している炎彬さん。

元々は他の歌手が出演するはずだったんだけど、体調不良で急に炎彬さんに代役が決まった。

明日の一番早い便で、一人で北京に行くらしい。



「ああ、持ち歌じゃなくて、人のカバーだからな。でも結局は、俺の方が二番煎じだ」


「......え?今回は自信ない感じですか?」



言葉の使い方おかしいような気もしたけど、炎彬さんにしては珍しく弱気な発言だ。

急に決まったことで、プレッシャーもあるのかもしれない。
< 448 / 559 >

この作品をシェア

pagetop