たとえ愛なんてなかったとしても
私と同じで、いつも何かに追い詰められているような顔してる。


ある意味では尊敬できて見習うべきところもあり、逆に目を背けたくなるような深い心の闇を見せる時もある。

よく分からない人。

だから気になって気になって仕方ないの。


もう自分がこの人を好きなのか、それとも憎んでいるのかもよく分からなかった。


色んな人が色んなことを言っていて、ただでさえ真実が分かりにくいのに、自分の中でさえ矛盾があるなんて。


強いものが勝つ弱肉強食で、それでいて何が正しいのかも分からない曖昧な世界。


私たちはこの不公平で曖昧な世界で、ただ曖昧に生きていくことしかできないの?


私はエリックさんに反論するわけでもなく、ひたすらペットボトルのお茶を握り締めることしかできなかった。


だって、もう自分が何が望みだったかもよく分からないから。


人生の勝者になれば、いつも不安なこの心も、愛を知らずに育った小さな私も、それで救われるはずなのに。


私が欲しいものは、本当は。
本当は......。



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