きのこのうら



そのままお隣を見つめていると、どうやらお隣のグループの内の一人もきのこのうらが嫌いらしいということがわかった。


「やめてくれよそんなの頼むの。俺はきのこの裏がどうしても嫌いなんだ」

短髪のつんつん頭の男性が目を瞑りながら二人の仲間に告げていた。その顔の顰めようからすると、相当嫌いなようだ。親近感。


「ああもうどうしてそんなもの付いてるんだ。そのスジみたいなやつ。俺はそれがダメなんだよ」

変な奴、と仲間に笑われる彼にどうしようもない仲間意識が生まれてしまった。私は特に何も考えずに隣のテーブルへ身を乗り出し、彼に話しかけた。


「私も大嫌いです。きのこのうら。どうしようもなく」

へら、と苦笑した。突然現れた私に彼以外の二人はぎょっとしたが、彼だけは、私の言葉に、私と同じように、へら、と苦笑した。


「気持ち悪いですよね。きのこのうら」

変な奴。人懐こくそう返した彼に、私もそんな印象を抱いてしまっていた。



誰かが言ってた。もしも価値観を重要視するなら、好きなものが同じである人ではなく、嫌いなものが同じである人と一緒になりなさいと。そうすれば、ずっと長く一緒に居られるからと。


***



四年後に彼からプロポーズを受けた私は、イェスの返事の代わりにシャンパングラスを上げて、こう言った。


「きのこのうらに乾杯」


人生で初めて、嫌いなものに感謝した。
















きのこのうら


end



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