Daddy Long ....


何を考えてるんだろう。
おじさんはここで過ごす時間をどう思ってるんだろう。

私は黙っておじさんの横顔を見つめていた。

ふいに強い風が吹いて、足元を冷やしていく。

その冷たさに気がついて公園の時計を見ると5時を過ぎていた。
私はあわてて立ち上がるとおじさんに上着を返した。

「帰るの?」

おじさんは上着を受け取って聞いてきた。

「はい。早く帰ってご飯の支度しないとだから…」
「帰ったらちゃんと頬を冷やしておきなよ」

おじさんはそう言って私の左ほほに触れてきた。その瞬間痛みで顔をしかめてしまった。

「腫れてる」

「あ、これ・・・・」

「親にやられたの?」

おじさんのその言葉にびっくりした。

お互いのことは今まで話さないし聞いてこなかったのに、今日はおじさんから聞いてきたからだ。

素直にそうですなんて言えるわけもなく、私は下手な言い訳でごまかそうとした。

「違いますよ。これは、その、虫歯で…」
無理な言い訳にもほどがある。

おじさんはそんな言い訳にそうかと答えて立ち上がった。

「俺も帰るかな」
「あ、そ、そうですか」

「ちゃんと頬は冷やしておきな」

「は、はい・・・・」

「子を思わない親なんていない」

「え?」

おじさんの突然の言葉に、思わず私は聞き返してしまった。

「もし、君の頬をそんな風にしたのが君の親なら、子供を亡くしてみたらわかるよ。自分の愚かさが」

「おじさん・・・?」

おじさんは冷たい目で私を見ていた。
いや、私を見ていたのではないかもしれない。
どこか遠いところを見ているような、何か別の人を考えているようなそんな雰囲気を感じた。

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