【完】結婚させられました!?
ニコニコと笑ってそう言ったその人に、
ペコリと頭を下げてから、キョロキョロ
と店内を見回す。
教室は、所々が暗幕で個室状態になって
いて、そのなかで一つだけ、「空」のプ
レートが貼ってあるのを見つけて。
ふと、音夜君を見上げれば、彼は未だに
不機嫌そうに頬を膨らましていた。
「……もう。なんで拗ねてんの?」
「だって心優が、"幼なじみ"とか言うか
ら」
そう言うと、ますます不機嫌そうな表情
を見せる音夜君。
「本当の事でしょ」
「心優、俺たちは幼なじみ以前に、婚約
者なんだぞ?」
「そんなの───……」
「否定なんか、させるかよ」
そんなの時効だよ。
そう言おうとすれば、不意に目の前が陰
って。
その要因である彼を見上げれば、やけに
真剣そうな眼差しを突きつけてきたから
、何も言えなくなった。