【完】結婚させられました!?
そしてそのまま、クイッと上に持ち上げ
られる。
「隙を、狙ってんだよ」
ニヤッと笑った先輩が、伏し目がちで、
その距離を更に縮めてきて。
先輩の唇と私のそれが、あとほんの数ミ
リで触れるというその瞬間に。
「はいストップー」
なんともこの場に似つかわしくない、間
抜けな声が上から降ってきて。
その声が誰なのか、私が理解するより早
く先輩は理解したのか、あからさまな舌
打ちをした。
見上げると、そこには張り付けたような
笑顔を浮かべた音夜君が立っていた。
「二人とも、夕飯の材料が整いましたよ
。速やかに準備に取りかかってください
ね?」
「……空気の読めない奴」
「わざとですから」
先輩はニッコリと笑う音夜君を睨んでか
ら、私の手を引っ張って立ち上がった。