恋愛指導は秘密のくちづけで
今さらキスしたからって始まるわけじゃない。


とっくに恋なんてあの冬の教室に置いてきた。


純粋だった気持ちは、もう冷めているのに。


少しだけ期待していた自分が情けない。


バッグの中で震えている携帯よりも、メガネケースを取り出し、メガネをする。


今日見ていたことがメガネのプラスチックレンズを通すことで見たものすべてが浄化されていくようだ。


プラスチックの度なしレンズから見た六月の夜空は星はなく、厚い雲に覆われている。


湿った空気が足元に肌にからみつくようで気持ち悪かった。
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