唄を
唄歌いはいつしかおじいさんになっていた。

唄歌いは最後に自分の産まれた故郷に帰る事にした。


故郷は寂れていて、疫病が流行っていた。

故郷には、笑顔も涙もなかった。

唄歌いは唄を歌った。

唄は、元気な人も病気の人にも、はっきりと聞こえた。

唄歌いは長い唄を歌った。

長い長い優しい唄を。

その唄は故郷から疫病を取り除いた。

そして、人々の顔に感情を戻した。

人々の顔に生きる力が宿った。

唄歌いは長く優しい唄を歌い終った。

唄歌いは地面に座り込んだ。

人々は唄歌いに駆け寄り、心から感謝を言った。




唄歌いは笑っていた。
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