天使な悪魔
「ふふ・・・初なんだね可愛い。」


悪戯っぽく口に手を当てて笑う。


「ちょっと、泪さん!」


ちょっと!泪さんってこんな人だったの?会ったばかりの人にあんな失礼な発言したり、礼儀正しくてだったり本当に分からない!


「ごめん。ついからかいたくなっちゃって。」


じっと見つめられる。目線を合わせたら催眠でも仕掛けられてしまいそうな・・・


何だろう・・・この怖いくらいに妖艶な雰囲気――



お昼一緒に居た時は凄く謙虚な感じで、優しくて・・・




「うわっ・・・!」



突然泪さんに身体を引き寄せられる。



「人間の血って良い香りがする――」




泪さんは目を細めながら妖魔の攻撃で負った私の首の辺りの擦り傷に顔を埋める。





バン!!!!!



私は力ずくで押し退ける。



「何するんですか!泪さん!」



いきなり何をするかと思えば・・・!目が回りそうだった。




突き飛ばした泪さんは悪びれた様子も無く立ち上がると、遠くを見据えて笑う。




「一つ勘違いしてるみたいだから、教えてあげる。」


「勘違い・・・?」





また、何を言い出すんだろう?知り合って間もないのに・・・。



「俺は泪の弟。雫(レイ)。」




窓から入る夜風に吹かれた前髪から彼の紫色の片眼が見え隠れする。



「宜しく、七瀬。」



そっと私の頭を撫でると黒い翼を広げ、ネオンの光に溢れた高層ビルの街へと消えて行った。



白いカーテンが揺れていた。
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