天使な悪魔
天使
バイト先では小桃ちゃんと未だ連絡つかずの状態で、皆が心配していたけど、私の心の中はそれどころではなかった。


鶫さんと小桃ちゃんの件でショックを受けていた私ですら、昨日のことですっかり頭がいっぱいになっていた。夜もなかなか寝付けずにいた。


所々の掠り傷が信じ難い記憶をフラッシュバックさせる。


彼が人間でなかったこと。所詮架空だと思ってた異世界の人間の闘いを目の当たりにしてしまったこと。


飛び交う紅い炎――


妖魔の攻撃がまともに当たっていたら、人間の私は致命傷を負っていたか、運が悪ければ命を落としていたかもしれない。


もうあんな目には遭いたくない。彼らに関わるのは凄く危険なこと。
一晩で嫌と言う程思い知らされたから・・・。


誰にも言わなければ、私が何も見なかったことにしてあのBarに二度と行かなければ彼にも関わらずに済んだのかもしれないけど・・・。


別れ際、彼は私の名前を呼んだ。


何故名前を知ってるんだろう?


落とした髪留めをきっかけに、泪さんにも雫さんにも存在を知られてしまった以上、後戻りは出来ない。



トレイから水の入ったグラスを取り、テーブルに置く。


「魂の抜けた面してると、妖魔にまた狙われちゃうかもよ。」



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