バーチャルウォーズ

そういってアメリカ人女性が雪美に見せてくれて写真は、なんとマークの若いときの写真だった。


「うそっ！マークだ。この人マーク・ローウィーですよね。」



「お嬢さん・・・どうしてマークを？
それにあの子はローウィーと名乗っているのですか？
マーク・ルフェンとは言ってないんですか？」


「あの、おばさんのお名前は？」



「パトリシア・ローウィーといいます。
息子を別れた夫の弟夫婦に預けたまま、私はこの国に来てしまったというのに・・・息子は私の姓を名乗ってくれているんですね。
信じられない・・・。うっうう・・・。」



「ぱとりしあだから・・・パティさんね。
私はマークが働いている会社の社長の娘だからマークの私生活はぜんぜん知らないんだけど・・・最近、父の会社でバイトさせてもらってマークに出会ってマークが知り合いの大きな会社から出向してきた話をききました。

だから、息子さんはすっごくがんばっていいとこに就職したってことなんですよ。
そうだ！マークと会いましょう。
息子さんといっしょなら住むところも困らないですよ。」



「でも・・・私はあの子を捨てて、愛する人のところへ行った悪い母です。
きっと恨んでいると思います・・・。
いまさら転がり込んでも、迷惑をかけるだけです。」


「そんなことないって・・・。
じゃ、じゃあね、どっちにしても生活していかなきゃいけないんだから、マークが怒っていたらうちに来て。

私がご迷惑をかけてしまって職をなくしてしまったんだもの。
うちの親に責任とってもらったらいいわ。」


「そ、そんなぁ、お嬢さん。」


「私は雪美。浅岡ゆきみよ。私がぶつかってしまったせいで、職を奪ってしまって生活を不安定にさせてしまうんだもの。

それに、うちのお父さんなら、うちの会社とか別の会社でも顔がきくから仕事を紹介できると思うわ。
だったらいいでしょう？
マークがどういう返事をしようが関係ないしね。」



雪美はそのままパティを連れて自宅へ帰った。
そして、夜に父がマークを自宅に連れてきた偶然に驚かずにいられなかった。


「うそ・・・どうしてマークが・・・？」


「あ～それなんだが、いつものようにお疲れさんを言ったら彼が困ってるみたいだったんでね。事情をきいたらマンションの上の人がボヤを出したとかで階下の彼の部屋も被害が出たらしくてね。

弁償はしてもらえるんだそうだが、当面寝るのに困るってきいたものだからね・・・ほら、うちは部屋があいてるしね。
おや、お客さんかな？」


「うん・・・私の方もちょっとご迷惑をかけてしまった方がいてね。
私のせいで職を失ってしまった人なの。
それで事情をいろいろときいたら・・・。」


雪美が父と会話をしているうちにリビングではパティとマークが驚いた顔をして固まっていた。


「マークなの・・・？」


「なんでこんなところにいるんだよ。
男とかけおちしたんじゃなかったのか？」


「ごめん。あなたにはどんなに謝っても許してもらえないわ。
でも・・・あの状況が精いっぱいだった。
夫の暴力になんとか耐えぬいて、なんとか離婚にもちこんで彼の知り合いの弁護士さんを通じてあなたから引き離して・・・。」


「ダディはすぐに死んだから戻ってくるように連絡したんだ！
でも・・・あんたはどこにもいなかった。
いろいろ捜したけど、俺から逃げてばかりいるような気がして・・・。
もう、俺の母親はいないって思うようにしたんだ。
なのに・・・。」


「雪美さんのお父さんの会社でお世話になっているの？」


「今はね。俺の本当のボスはアメリカにいて、出向でこちらの会社にお世話になっている。
あの男と仕事で接触があれば、痛い目にあわせてやれるかと思ってね。」


「そう・・・。残念だけどあの人はこの国に来て１年もしないうちに死んだわ。」


「えっ！？」