ベストマリアージュ
「ごめん……せっかくの誕生日台無しにして……」


泣き止まない私に、さとしの弱々しい声が降り注ぐ。


このままじゃ駄目だと、私は必死に鼻を啜りながら涙を止めた。


聞いてもいいかな?


どうしてこんなに遅くなったのか……


どこにいたのか、誰といたのか。


聞かなきゃ終わらない気がする。


さとしの胸をそっと押し戻して、その隙間から顔を覗かせると、私は涙で濡らしたままさとしを見上げた。


ん?て顔でさとしも私を見下ろす。


いつもの俺様な彼はどこへやら、困りきった顔で私の頭を優しく撫でた。


「どこ、に、いたの?」


散々泣いてたせいで、口の中がカラカラだ。


「し、仕事で、こんなに、遅くなんない、よね?」


「珠美……」


「誰、と……いた、の?」


さとしの腕をキュッと握りしめながら、目は逸らさずにもう一度今度ははっきりと訊ねる。


「誰と、いたの?」


コクンとさとしが唾を呑み込んだ気配がした。


その瞬間、心臓が胸を締め付ける。


私はまた嘘つかれるの?


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